「座礁した資産って!?」
初めてこの言葉を目にした時の率直な感想です。
strand は船などを「座礁させる」という動詞。
I was stranded. とすると
「行き詰まった/にっちもさっちも行かなくなった。」
という悲痛な叫びになります。
座礁資産とは、状況の変化によって価値が毀損された資産。
現在そのリスクにさらされているのは、化石燃料に関する資産です。
英国の独立系シンクタンク・カーボン・トラッカー・イニシアチブも
この問題に着目し、化石燃料に関する投資が座礁資産となるリスクに、
投資家の注意喚起を呼びかけています。
5月にレポート要旨とプレスリリースの英日翻訳を担当いたしました。
化石燃料への投資がなぜ、座礁資産になるのか。
その背景には、気候変動リスクに対する世界の動きを見る必要があります。
・「2度目標」
2010年の気候変動枠組条約締約国会議(COP-FCCC)でのカンクン合意で、
「産業革命前の水準に比べ地球の平均気温の上昇幅が2℃を超えるのを
防止するために排出量が削減されるべき」であると確認。
COPではこの「2度目標」にむけて何をすべきかという議論が活発で、
1.5℃以内に抑えることができる可能性も検討されています。
・米国 の温室効果ガス排出規制案
2014年6月、米国環境庁(EPA)が温室効果ガス排出規制案を発表。
CO2排出量の多い石炭火力発電への新規投資の取りやめや
発電所の早期閉鎖が米国で加速する兆しです。
・石炭火力発電所への投資から撤退の動き
2015年5月22日には、フランス大手保険会社アクサが
保有資産から石炭火力向け投融資をすべて排除すると宣言、
その規模は5億ユーロです。
Axa to divest from high-risk coal funds due to threat of climate change
(5月22日英国ガーディアン紙より)
天然ガスや風力・太陽光発電のコストが低下する一方で
石炭火力発電所は、排水や廃棄物処理のコストが大きいことも
この動きに拍車をかけています。
オックスフォード大学の
Smith School of Enterprise and the Environment (SSEE)が
2012年に座礁資産プログラム(Stranded Asset Programme)を開始するなど、
様々なセクターの資産を
「システム上の座礁へと追いやる = 行き詰まらせる」環境関連のリスクについて
理解を深めるため、研究も進んでいます。
以下のサイトで、 3つの日本語レポートへのリンクをまとめています。
ぜひご覧ください。
過去プロジェクト事例
化石燃料のリスクに関するレポート 日本語版
Image provided by Carbon Tracker Initiative