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2016年11月に発効したパリ協定のもと、
世界では温室効果ガス排出量の削減に向けた取り組みが進んでいます。
今回は、地球温暖化や気候変動に関する文章で頻繁に見かける
carbon を使った様々な表現をご紹介し、
そこから見えてくる世界の動向を探ってみます。
まずは「温室効果ガス排出量」。
パリ協定本文では greenhouse gas emissions とされていますが、
同じような意味で carbon emissions と表現されることもあります。
地中にとどまっていた化石燃料を掘り起こし、
それをエネルギー源として使うことで、大気中に放出させるという、
人間の活動にともなう炭素の動きに焦点を当てています。
また、そのような活動による環境への影響を表す表現として、
carbon pollution や carbon footprint があります。
carbon pollution と聞けば、
石炭や石油が燃やされて、煙突からモクモクと煙が上がり、
大気が汚染されていく様子が目に浮かぶようです。
carbon footprint は、
日本語でもカタカナ表記で「カーボンフットプリント」と表現され、
個人や組織の活動による環境負荷全般を指します。
企業の環境報告などでは、
このcarbon footprint がCO2換算され数値として記載されることもあります。
一方で、上記のような影響を少しでも抑えようとする取り組みにも
carbon を使って表されるものがあります。
たとえば、carbon pricing。
炭素の排出量に価格をつけ、
その削減に経済的なインセンティブをつける動きで、
日本語では「カーボンプライシング」「炭素価格制度」と表現されます。
企業でも排出削減の様々な取り組みが行われています。
ユニリーバは2030年までに carbon positive を実現するという目標を掲げていますが、
その内容は、
「自社の使用量よりも多くの自然エネルギーの発電を支援」するというもので、
化石燃料に依存しない企業活動を目指すという方向性を明快に表しています。
ここに挙げたものを含め、
環境関連の文章で見られるcarbonを使った表現には、
比較的新しいものが多いように感じます。
気候変動や地球温暖化という結果ではなく、
まずはその原因である化石燃料に依存した私たちの暮らしに目を向けようという
社会の動きを反映して生まれた言葉だと考えられます。
気候変動による影響が世界の至るところで分かりやすい形で表れている今、
これまでのように low-carbon society (低炭素社会)を目指すのでは生ぬるく、
decarbonized/carbon-free society (脱炭素社会)に向けて
本気で取り組むべきときにきているのかもしれません。
(翻訳コーディネーター/翻訳者 山本 香)