カタカナ語として定着している言葉には、そのまま英語に戻しても
意味が伝わりにくいものがあります。
「ハード」と「ソフト」もそんな言葉の仲間です。
例えば、コンピュータのハードウェアとソフトウェアを、日本語では
ハード、ソフトと言いますが、英語では略せずにhardware、softwareと言います。
防災などの国際協力の分野でも、ハード面での支援、ソフト面での支援という形で
この二つの言葉はよく使われます。一般的に、ハードは機材や施設の支援を指し、
ソフトは教育訓練や技術指導、法律や制度の整備などの協力を指します。
こうした場合のハード、ソフトの英語表現には、以下のような例があります。
structural and non-structural measures
構造物対策(ハード施策)及び非構造物対策(ソフト施策)
ほかに、ハード、ソフトという表現にこだわらず、具体的な支援内容を記載する
(例えばソフトという代わりに、technical assistance servicesと表す)場合も
あるようです。
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さて、環境・エネルギー分野の翻訳では、どちらかというと堅めの文章を扱うことが
多いのですが、一般の読者を想定した、柔らかい文書と向き合うこともあります。
これもハード系とソフト系、と言えるかもしれません。
原文に合った語彙や文体を駆使できるよう、言葉の引き出しを
増やしていくことが大切だと感じています。
先日、海外の友人が旧友との再会に際して、こんな表現を使っていました。
“We both can talk the legs off an iron chair!”
その後の文脈で想像はついたのですが、念のため調べてみると、
オーストラリアのスラングで、長話をするという意味のようです。
何時間でも話せる、話は尽きない、という感じでしょうか。
いつどこで役に立つか分かりませんが、こんな会話の中の一言にも
表現のヒントは隠れています。
今年もあと数週間。年末年始は、頭を柔らかくして、
新しい言葉や知識を吸収する時間も持ちたいと思います。