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印象に残る、「映像」として伝わる表現

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visualizedPhoto by ochoresotto

英訳チェックをしていると、ただ正確に意味を伝えているだけでなく、
特定の状況にピッタリの象徴的な表現に思わずハッとすることがあります。

先日、CSRレポートで「変化が激しい社会」という原文が
volatile societyと訳されているのを見つけました。
考えられる別の訳としては、rapidly-changing societyなど
やはりchangeを使ったものが真っ先に思いつきますが、
それよりもずっと強く印象に残る英文です。

volatileには、「変わりやすい」「一時的な」といった意味のほかに、
<液体・油が>揮発性の(ジーニアス英和大辞典より引用)という意味もあります。
私の頭の中には、さっきまでそこに存在していたものが
白い煙とともにあっという間に消えてしまうといった場面が浮かびます。

ファッションにせよグルメにせよ、あらゆるトレンドがものすごいスピードで変化し、
インターネットの普及で一瞬にして新しい価値観が世界中に広まる
――まさに当たり前だったものが次の瞬間には跡形もなく消えてしまう。
そういうことが起こりうる今の社会を表すのにvolatileはピッタリの表現でしょう。
ちなみに、絶えず変動する今の時代を
VUCA(ブーカ)と表現することがありますが、
その最初のVはvolatility(変動性)を表しています。

もうひとつ、CSRレポートで見かける印象的な表現として
community outreachがあります。
企業の取り組みに関する文脈で「地域社会への奉仕活動/働きかけ」を表します。
このoutreachは、

【福祉】アウトリーチ《福祉サービス・援助などを
通常[現在]行なわれている限度を超えて差し伸べようとすること;
そうした活動の範囲》
(リーダーズ英和辞典第2版より引用)

を意味し、日本語としても使われるようになってきています。
単語本来の意味の1つに、
stretch out one’s arms
(Oxford Dictionary of Englishより引用)
という定義があり、 めいっぱい手を広げて
隅々まで届けようとしている情景が浮かび、
書いた人の優しさまで一緒に伝わるような気がします。

このように「映像」として伝わるような表現は、
読んだ人の印象に強く残ります。
決して簡単に考えつくものではないですが、
これからも翻訳者の方と協力して
よりよい表現を追求していきたいと思います。

(翻訳コーディネーター/翻訳者 山本 香)

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